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名古屋南部大気汚染公害訴訟を語る

1 一次訴訟の結審を終えて
(森田)名古屋南部大気汚染公害訴訟(あおぞら裁判)も、昨年の一一月一日に一次訴訟が結審となり、今年には判決も予定されています。そこで、今日は、うちの事務所からあおぞら裁判の弁護団に参加している四人で、あおぞら裁判のことを語ってみようと思います。そこで、まず、恵子先生は、平成元年の提訴の時から弁護団に参加しているわけですが、現在はどんな感想ですか。
(原山)提訴から数えると一〇年以上経つけど、私にとっては「もう一〇年も過ぎたのかしら…」という感じよ。でも、その間にも原告の患者さんたちがたくさん病気で亡くなったことを考えると、一〇年は長いですよね。
(北村)確かにそうですね。一次訴訟から三次訴訟まで合計すると三〇〇人近い原告の人がいるけど、そのうち約九〇人が亡くなってしまった。それを考えると、確かに長い年月だと思うよ。
(藤井)その意味で、本当に早く解決しなければならないですね。特に、被告の国と企業のうち、企業とは今年中に和解で解決したいですね。

2 企業との交渉
(森田)今は、平均すると月に一回ぐらいの割合で被告企業との交渉をしていますが、交渉の時に被害の訴えをしている患者さん達の姿には感動しますよね。
(北村)患者さん達は被告企業の担当者に自分たちの苦しみを少しでも分かってもらおうと必死で訴えているんだけど、それを聞いている僕らまでじーんとくるよ。
(森田)患者さんが自分で語る苦しみは本当に実感が伝わってきますよね。
(北村)僕は、陳述書をつくるために寝たきりの患者さんの家に行って聞き取りをしたことがあるけど、その時は、患者さんの苦しみというものを本当に実感したよ。
(藤井)そう、私が担当した患者さんのうち、八〇歳の人は、すぐぜん息発作が起きて聞き取りができなくなる。見ていて本当に気の毒だった。
(原山)「この裁判を早く解決したい。」という患者さん達の気持ちは弁護士の何倍も強いわよね。

3 署名活動
(藤井)早期解決を求める署名活動でも、患者さんたちは毎週のように街頭で署名集めをしている。本当に頭が下がります。
(森田)署名と言えば、北村先生は一人で一万四〇〇〇人を超える署名を集めましたよね。どんな方法でこんなに集めたんですか。
(北村)署名の集め方と言っても、特別な人脈があるわけじゃないし特殊な方法で集めているわけでもないよ。自分の事件の依頼者、知人、友人など人に会えばとにかく署名のお願いをするんだ。一見地味なようにも思えるけど、意外な人が何百人分もの署名を集めてきてくれることもあるよ。そんなこんなで気づいたらこんなにたくさんの署名が集まったんだ。自分でも驚いているよ。それだけじゃなく、署名活動を通じてさらに多くの人たちとの信頼関係もできたと思う。

4 担当についての苦労話
(森田)あおぞら裁判は、裁判のなかで法律以外の専門的な知識が必要になることが多いから、裁判を通じて他の分野の専門家の人たちともいろいろと知り合いになれましたよね。
(北村)医学、気象学、疫学、自動車工学など本当にいろんな専門分野の知識が必要だよね。
(森田)法律以外の専門分野のことを理解するのは、なかなか苦労しますよね。
(原山)私は、因果関係班だけど、もともと理系の頭じゃないでしょう。だから、そこで扱っている統計や疫学のことがさっぱり理解できなくて苦労していますわ。理系出身の藤井さんが本当にうらやましい。
(藤井)私は、もともと理系の出身ということで気象班にいれられたんです。でも理系出身といっても気象学を専攻していたわけではないので、気象学の専門的なこととなると、やはり苦労しましたよ。工場の煙突から出された汚染物質がどのように被害者の居住地にとどくかということを説明するのは本当に大変でした。
(北村)僕は被害班で、尋問では、大気汚染による被害の実態や公害反対運動の歴史について患者会の伊藤さんを尋問したけど、準備のために尋問事項を一〇回近くも書き直した記憶があるよ。運動というのは、学問とはまた少し違った分野だけど、教科書などの文献には書かれてないようなことをたくさん教えたもらった気がするよ。
(森田)僕は、医学的なことの担当ですけど、生協病院のお医者さんには勉強会や検討会などで本当にお世話になっています。それだけでなく、検討会の後、たまに食事をしながら雑談をすることもあるんですけど、弁護士とはまた違った話が聞けてとても楽しいですよ。
(原山)そうね。やっぱり何事も楽しくなきゃだめよ。

5 合宿
(森田)弁護団合宿の夜に、食事をしながらみんなでいろんな話をするのも楽しいですよね。
(北村)夏と冬の弁護団合宿は恒例行事だね。日程の確保や家族サービスの休日がつぶれたりしていろいろ大変だけど、他の弁護士と議論したり、書面の内容を検討したりすると、他の弁護士の良いところをたくさん見ることができて参考になるよ。
(藤井)他の事務所の弁護士とあれだけ長い時間をかけて徹底した議論をするということは、他ではほとんどありませんからね。
(原山)それだけじゃなくて、一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりして、他の人たちの人柄もよく分かっておもしろいわ。特に同室になった人とは、普段しないような話もしたりして。
(北村)ぼくと森田君は、合宿の夜に打つT木先生との麻雀も楽しみだよね。
(森田)T木先生がいないと、麻雀してても物足りない気がしますね。
(原山)この事務所ニュースが送られる時期は、ちょうど冬合宿をしている頃ね。

以上

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