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日栄に対し過払い返還命令判決

弁護士 前田義博


 名古屋地方裁判所で、1999年11月18日、商工ローントップの日栄に対する1,493万円余(元本は1,190万円)の債務不存在を確認し、逆に448万円余の過払い金の返還を命ずる判決が出ました。利息制限法は元本が100万円以上の場合年1割5分を超える利息は無効と定めているところ、日栄は年4割弱の高い利息を取っているので、取引の最初にさかのぼって制限利息をこえる部分をつぎの貸付の元本返済にあてたものとみなし、減った元本に再び制限利息をかけて順次計算していくと、数年で元本がなくなってしまい、逆に払い過ぎが生ずるということになるのです。
 このような計算方法は昭和30年代の最高裁判決に根拠があり、決して新しい考え方ではないのですが、日栄の場合は毎回の取引が手形貸付の形をとっているので、これを形式的にとらえて、それぞれが別の取引であり、順次元本充当計算することは認められないというのがこれまでの判決の主流でした。また、日栄の利息が年四割弱だと言っても、形式上別法人の日本信用保証の保証料名目でとっているものまで日栄の利息とみなすことはできないというのがこれまでの判決の主流でした。今回の判決は、これをいずれも実質的にとらえて、保証料を利息とみなし、順次計算も認めており、高く評価することができます。
 原告の野村さんは、1998年の御用納めの後である12月28日に相談にみえました。そして1月に提訴し、約1年弱の審理期間でこの判決をかちとりました。提訴と同時に手形譲渡・取立禁止の仮処分命令も得たので、野村さんは不渡りを出すことなく、今は自分の仕事と、他の被害者援助のために飛び回っておられます。
 今も商工ローンの高利に苦しんでおられる中小企業の皆さんは、是非弁護士に相談されることをお勧めします。手形の取り立てを止めることも可能ですが、あまり支払期日が迫ってからでは大変ですから、早めにご相談ください。
 そして、私たちは、個々の相談や依頼に応じるだけでなく、商工ローン被害を根本的になくすために必要な施策を求める運動を展開するつもりです。本当は利息制限法に違反して無効でも、罰則があるのは出資法という別の法律で約4割を超えた場合だけとされているので、サラ金や商工ローンがその中間のいわゆるグレーゾーンで営業しているためです。根本的な解決のためには、利息制限法の上限金利と罰則適用を一致させること、取り立て行為をさらに厳しく規制すること、さらには銀行の貸し渋りをやめさせ、政府にはもっと中小企業振興策、救済策をたてさせることが必要です。

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