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塩漬け土地の情報公開訴訟について

弁護士 佐久間信司


 日本の国は長年にわたる土木・建築の大型プロジェクト中心の金遣いをしてきたため、今は中央政府も地方自治体も借金漬けの財政状態のところが多い。全国各地の市民オンブズマンが集った平成11年8月第6回神奈川大会でメインテーマに地方自治体の塩漬け土地や第三セクターに関する情報公開・解決策提言活動を取り上げた。そこで大会後さっそく名古屋市民オンブズマンでは名古屋市が保有している土地開発公社の事業報告書、財務諸表、保有土地一覧表などの情報公開請求を行った。その結果、市は保有土地一覧表のうち土地の金額(取得欄、積上欄の各単価・金額)を非公開にし、その余の部分だけを公開とした。
 しかしこれでは公社がいつ・いくらで購入した土地がどこに残っており、それを市が現在いくらで買い取らなければならないのかが全く判らない。公社は全額借入金で土地を先行取得するため、公社が市に転売するまでの間の利息(取得価額の数%)や事務手数料(取得価額の約1%)は土地の価額に積上げされ、名古屋市は将来この上乗せ金額で土地を買い戻さなければならない。公社が長期に保有するとそれは名古屋市の不良資産となりそのツケはいずれ市民に回ってくる。公社が平成11年3月末時点で保有している土地はトータルで面積約152ヘクタール、価額約2500億円に上り、そのうち5年以上の長期間にわたり保有されている土地(塩漬け土地ないし官遊地)は面積で約74ヘクタール価額で約1270億円にも上る。名古屋市の保有土地の面積、価額は政令指定市の中でワースト3に入る。 そこで名古屋市民オンブズマンでは平成11年10月に保有土地の金額の公開を求めて裁判を起こした。名古屋地裁で審理が始まり、公社の塩漬け土地情報が市公文書公開条例9条所定の非公開情報(個人情報、法人情報、行政運営情報)に該当するか否かを巡って議論になっている。しかし同種事案で争っていた横浜市長は平成11年9月に「全国的な動向を含め幅広く検討した」結果、上告を断念して取得価額を公開した。
 臭い物にはふたで問題を先送りするのではなく、市幹部に都合の悪い情報も市民にオープンにして、市の財政危機を打開するため広く市民の英知を結集するという発想が、名古屋市には必要だと思う。

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