NTTリストラ裁判始まる   弁護士 福井悦子
   
 
五〇歳になった時いずれかを選択せよと言われたら、あなたならどうしますか。

a 退職しOS(アウトソージング)会社で再雇用してもらう。今までの仕事を続けられるが、
賃金は一五〜三〇パーセントダウンする。

b 今の会社に残る。賃金は今までどおり。
しかし、今までの仕事はもうない。異職種への配転・全国配転を覚悟せよ。
“去るも地獄、残るも地獄”とはまさにこのことです。五〇歳。親は老い、子どもには
一番お金がお金がかかる時期です。
月額一〇万円もの賃金ダウンは呑めるものではありません。
しかし今までの仕事を奪われ遠隔地へ飛ばされたら家族生活は崩壊します。
こんな選択を迫ること自体非人道的です。
しかし、実際に強行されたのです。
選択を迫った会社−それは毎日テレビで洪水のごときCMを流しているNTTです。
ほとんどの社員は苦渋のうちに退職・再雇用を選びましたが、約八〇〇名がNTTに
残りました。NTTはこの人達に報復・見せしめ的配転を強行しました。
二〇〇二年九月二五日、NTTに残り、遠隔地に配転された人が、一斉に配転の
無効確認を求めて各地の裁判所へ提訴しました。
これがNTTリストラ裁判です。名古屋地裁の原告は五名。
石川、高知等から名古屋に配転された人たちです。
皆三〇年余も培ったスキルを無視され、地理不案内の名古屋で地図を頼りに
ADSLとBフレッツの販売をしています。
原告の一人の父親は息子が名古屋に赴任したあと亡くなり、息子は親の死に目に
あえませんでした。全員が故郷に残した両親の介護や家族の生活を心配しています。
NTTはリストラの理由として西地域会社の赤字を殊更に取り上げていますが、
NTTの本来事業では一三年度七一八二億円の経常利益を上げています。
赤字は海外投資の失敗による特別損失とリストラ費用を上乗せした単年度の
ものにすぎません。内部留保は実に八兆八八〇〇億円の超優良企業です。
NTTリストラがまかり通るなら、解雇に厳しい制約を課した「整理解雇の四基準」は、
六〇歳定年制の法律は、労働協約は、今までの春闘はいったい何だったのかということに
なります。
NTTリストラこそ「仁義なきリストラ」の最たるものです。
阻止の戦いは今、裁判所が表舞台になりました。皆様のご支援をお願いします。
当事務所からは川口、福井の二名が弁護団に参加しています。

 

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