なにがどう変わる
 正念場を迎える司法改革    弁護士 田原裕之
   
 
 明治期、太平洋戦争後以来の大規模な司法改革が今年正念場を迎えています。
なにがどう変わるのでしょうか。私たちは、「市民の権利が守られる開かれた司法」の
実現に向けて努力しています。
「弁護士費用敗訴者負担」−相手方の弁護士費用も負担
訴訟で負けた場合に相手方の弁護士費用を負担しなければならないと言う制度が
導入されようとしています。
この制度ができると、

依頼者「先生、私の事件は勝てるでしょうか。」
弁護士「勝てるように努力しますが、勝つという保証はできませんね。」
依頼者「やるだけのことはやってみたいのですが、どのような費用がかかるのでしょう。」
弁護士「これまでは着手金と実費でしたが、新しい制度ができて、負けた場合には相手方の弁護士費用も負担しなければならなくなりました。」
依頼者「それまではとても負担できません。訴訟はあきらめます。」
という事態になりかねません。

弁護士会では、その導入に反対する運動を強めています。
「裁判員」−刑事裁判に市民が参加
刑事裁判に一般市民が「裁判員」として参加し、有罪無罪や量刑の判断を行う制度です。アメリカ映画でよく見る「陪審員」制度を日本的に取り入れたものです。職業裁判官に対して対等に一般市民が意見を述べるためには、裁判官より多くの裁判員が加わることが必要です。また、集中的に審理するために、検察官の手持証拠をすべて開示させる等の訴訟手続改革が併せて行われることが必要です。
「被疑者公選弁護」−起訴前にも弁護士がつく
これまでは起訴された後には必ず弁護人が付きましたが、起訴前にはその保障がありませんでした。そこで、起訴前にも必ず弁護人がつく仕組みを作ろうというものです。国が監督することになって弁護活動の自由が侵害されることのないようにしなければなりません。
「仲裁」−裁判が起こせなくなる
仲裁というのは、紛争の解決を仲裁人に委託する合意で、仲裁合意があると裁判は起こせなくなります。今回の改革では、事前合意も認めようとする動きがあります。アパートや借家の賃貸借契約、雇用契約、消費者契約に「仲裁合意」の条項が印刷されていると、その契約に関して裁判は起こせなくなります。弁護士会は、「紛争が起きてから仲裁合意すべきであり、事前の合意は無効とすべきだ」と主張しています。
「法科大学院」−日本型ロースクール
裁判官、検察官、弁護士になるには司法試験合格だけが要件でした。これを、原則二年間の法科大学院を卒業し、その後に司法試験を受けて法曹になる、という制度に改めようとするものです。二年間の間に「司法試験の受験勉強」だけでなく幅広い法律知識を身につけ、優れた法律家を育成するのがねらいです。これに伴って、司法試験合格者数も現在の二倍程度に増加することが予定されています。
その他にも多くの改革が
紙面の都合上、ごく簡単な紹介になりました。また、外にも紹介できなかった制度改革がたくさんあります。その多くが今年結論に至ろうとしています。新聞報道でも取り上げられる機会が増えておりますので、是非注目してください。

<戻る>