法科大学院           弁護士 前田義博
   
 
 ひとりひとことにも書いたが、法律実務家の養成制度が抜本的に変わり、これまでの司法試験一本の選抜制度から、法科大学院というものが設立されて、そこでのプロセスとしての教育が重視されることになった。そうしないと法律実務家の増員も、これからの社会に役立つような法律実務家の養成もできないというのだ。
 法律実務家の増員の必要性は痛感している。裁判官や検察官は言うに及ばず、弁護士だって少数で裁判所の周りにたむろしてちゃだめだ。もっと社会のすみずみに入って活動すべきだと思う。非人間的な受験勉強で針の穴を通すような司法試験制度にも、既存の大学の教育にも批判的だった。紛争の後始末屋だと自嘲するのではなく、社会の変革にもっと役立たなくちゃ。
 などとえらそうなことを考え、よっしゃと実務家教員に立候補した。浅学非才は承知の上だが、俺のことをそう言うのならおまえやったらどうだと居直った。
 しかし、大切なことは細かな知識じゃなく問題解決能力だとか、社会や人間に関する洞察力だとか、外からものを言っているうちは気楽だが、法科大学院の中に飛び込んでそれを自ら実行するのは大変なことだ。俺には想像力はともかく創造力はないなあ。また、もしかしたら大学側は少子化社会に向けた単なる生き残り政策と考えているのじゃないか、今までの教育が批判されていることが本当にわかっているのか。
 準備を始める中でさまざま不安が募るようになったが、リスクをおそれないチャレンジ精神が大切さと、流行り言葉でまた居直ってやっている。

<戻る>