「憲法」の意味を,いま一度問い直す   弁護士 稲垣仁史
   
 
 護憲政党が議席を減らし,世論調査でも改憲賛成の意見が増えた旨報道されこのところ改憲へ向けた動きが具体化しつつあるようです。しかし,この間の議論を見ていると,どうも憲法の本来の意味合いがどこかに忘れ去られ,権力者が唱える「改憲の必要性」に多くの国民が流されているように思えてなりません。そこで,憲法の意味を考えるに…。 そもそも憲法とは,単なる「国家の根本規則」という形式だけのものではなく,「国民にとって最低限これだけは譲れない」という基本的価値を守り抜くために,国民が権力者の行為を制限して権力者の横暴・暴走に歯止めをかけるところにこそ,その実質的な本来の意味があったはずです。権力側からみれば,憲法は本質的に手カセ・足カセなのであって「そのカセを外したい,緩めたい」というのは権力者の常の欲求です。そうであればこそ,国民としては,為政者の唱える「改憲の必要性」には常に眉に唾をつけて,まず疑ってかかるくらいの慎重さが必要でしょう。また,憲法の理想と現実社会との間にズレが生じつつあるのであれば,まず改めていくべきものは,理想ではなく現実の方でしょう。
 現在唱えられている「改憲の必要性」,特に「国際社会の情勢」等は,特定の外国政府や「憲法のカセを外したい権力者」の政策に合うように,作られたり解釈されたりしてはいないでしょうか。
 現実の社会情勢が変化しても,闇雲に権力者の唱える「現実がこうだから…」に流されず,いま一度憲法のそもそもの意味合いを再確認してみることが大切だと思います。

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