アイディック節電器被害   弁護士 荻原典子
   
 
「電気代が今より三割以上は節約できるから、クレジット代金を支払っても、まだお得です。」などと称して効果の期待できない節電器を全国で販売していたアイディック社が、二〇億の負債を抱え、平成一五年一月破綻しました。アイディック社の節電システムは単に電圧を下げるものであるため、性能維持のため必要な電気料を確保する構造となっている通常の電気機器に使用した場合、電圧を下げても電流が大きくなって節電効果が得られないにもかかわらず、アイディック社はそれと知って、クレジットの分割購入代金を超える節電効果があるものとして販売していたのです。
 アイディック社は、事業主をターゲットに節電器を販売していました。販売店が詐欺商法によって顧客を騙して商品を販売した時、クレジット契約をしたのが消費者であれば、売買契約を詐欺によって取り消すことを信販会社に対しても主張してクレジット代金の請求を拒むことが割賦販売法で認められていますが、事業者の場合には、法律上このような主張は認められていません。しかし、節電器に効果がないとして苦情があいついでいたことは、平成一〇年頃から北海道などの消費生活センターによって発表された実名による被害情報でクレジット会社は知ることが出来ていたと思われますし、クレジット会社に対しても直接顧客から同様の苦情が相次いでいたことが判明しています。
 効果の期待できない節電器の売買と知ってなお、アイディック社の節電器に対して立て替え払いを継続していたクレジット会社の責任も問われなければならないと考えます。
名古屋でも一〇〇名を超える被害者の相談を受けて弁護団を結成しました。アイディック社と信販会社に対する損害賠償請求訴訟をこのニュースが発行される頃には提起している予定です。被害者は全国にまたがっており、五万人を超えると報道されています。全国の弁護団と連絡を取りながら、被害救済につとめたいと思っています。

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