国立大学進学差別問題への取組  弁護士 川口 創
   
 
 平成15年3月6日、文部科学省は、朝鮮学校を含む民族学校には従来通り国立大学の受験資格は認めず、一定のインターナショナルスクールの卒業生だけに国立大学入学資格を与えると表明しました。この背景には、「日本人拉致問題」などで北朝鮮への国民感情が悪化したことが要因、との報道もありました。
 国の問題に子どもの将来を巻き込むものとして不当であり、また、明らかに不合理な差別であったため、大きな反対の声があがり、民族学校に対する対応は一度は「白紙」となりました。
 しかし、文科省は8月に入り、今度は朝鮮学校を除く一定の民族学校には受験資格を認めるとし、朝鮮学校に対しては各大学の個別判断に委ねるという方針を出しました。
 これに対して、全国の弁護士有志も文科省に強く抗議するとともに、全国の国立大学大学に受験資格を認めるよう受験資格認定申請書を出しました。名古屋でも多くの弁護士が名古屋大学への進学を求める二人の朝鮮学校の生徒の代理人として、受験資格を認めるよう、大学側に働きかけを行いました。
 様々な取り組みが結実し、名古屋大学を含めた全国の国立大学が朝鮮学校卒業生に対して門戸を広げることとなり、結果として、今まで何十年も認められてこなかった国立大の受験資格が認められるようになりました。
 名古屋の朝鮮学校の生徒二人の将来が開けたことが、何より嬉しかったですし、また、この社会の良識を信じて、あきらめずに運動に取り組んで本当に良かったと思いました。
 

<戻る>