『司法改革ほぼ出揃う-
いよいよ実施の段階へ』 弁護士 田原裕之
   
 
 司法改革がいよいよ実施の段階を迎えています。そのいくつかを紹介します。

裁判員制度(二〇〇九年五月までに実施)
  殺人などの重大事件について、裁判官三名と裁判員六名が有罪無罪の判定と
  どの程度の刑にするかを審理する制度です。
  裁判員は、二〇歳以上の国民から事件ごとに抽選で決められます。
  刑事裁判に国民が参加する手続で、アメリカなどで行われている陪審制度を
  日本的に加工して作られたものです。
  日弁連会長声明は、証拠を弁護人に開示すること、被疑者段階から国選弁護人を
  つけること、取調べ過程を録画・録音することなどの制度改革が、施行までに実現
  されることが不可欠であると指摘しています。
 
労働審判制度(二〇〇六年四月実施)
  長引く不況のため、リストラやサービス残業など、雇用をめぐるトラブルが増えています。
  しかし、裁判には時間と費用がかかる。そこでこの制度が作られました。
  審理は、三回以内の期日で終結します(簡易迅速)。その結果、裁判所は、金銭の
  支払などの財産給付、「紛争解決のために相当と認める事項」を命令します
  (調停では相手が了解しなければ「不成立」となります)。
  なお、この命令に異議申立があると裁判に移行します。
  判断は、裁判官、労働者代表、使用者代表の三名で行います。
 
行政訴訟改革(二〇〇五年五月までに実施)
  わが国の行政訴訟で住民の訴えが認められることはたいへん困難でした。
  今回の改正では、行政訴訟を起こす資格を広げる、行政庁に行政処分を義務付ける
  訴訟を認める、行政処分を差し止める訴訟を認める、判決前の行政処分差し止める
  手続を改正する、裁判所が行政庁に資料提出を要求できる制度を新設するなどの
  改正がなされました。
 
裁判所改革(既に実施されています)
  裁判官の任命に国民の意見を反映させるため「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」
  を設置。
  裁判所運営に国民の意思を反映させるため、「地方裁判所委員会」が新設され、
  既に設置されていた「家庭裁判所委員会」も改組されました。新任の裁判官が
  社会経験を身につけるため、「他職経験制度」が予定されています。
 
弁護士費用敗訴者負担制度
  裁判で負けた側が相手方の弁護士費用を負担する制度です。
  この制度が導入されると、裁判を申し立てるのをためらうようになり、「国民のための
  司法改革」に反します。
  反対運動の高まりによって、「合意があった場合」に限定するという案が出てきました。
  しかしこの案でも、会社の就業規則や賃貸借契約書、信販契約書に「敗訴者負担」が
  書かれていると、その契約に関する訴訟では、弁護士費用を負担しなければならなく
  なります。日弁連はこの制度の導入に反対しています。

 

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