『自衛隊の撤兵を求めて』   弁護士 川口 創
   
 
一 ついに「多国籍軍参加」
6月28日、イラクへの主権移譲がなされ、同時に自衛隊が多国籍軍に参加することになりました。これが違憲の上塗りであることは明かであり、歴史的暴挙です。現実にイラクに派兵している国は極めて少数であり、日本ほどアメリカに従属している国は他にありません。すでにイラクの国民からは、完全に信頼を失っていますし、派兵をしていない独仏などの多くのヨーロッパ諸国からも冷ややかに見られています。一日も早く、自衛隊の撤兵を現実のものとしなければ、私たち日本に住む者は、世界から本当に孤立化していくことは明らかです。

二 裁判を提訴
  自衛隊のイラクへの派兵は決して許してはならない、一日も早く撤兵をさせなければならない、という思いから、2004年2月23日と4月14日に、名古屋地方裁判所に「自衛隊のイラク派兵差止訴訟」を提起しました。2月23日の第一次提訴時は1262名、4月14日の第二次提訴時は1101名と、併せて、全国から集まった原告数の合計は2362名となりました。
  現在(六月末現在)も原告の募集が続いており、毎日委任状が全国から届いています。7月12日には原告数が3000人を超えました。

三 第一回口頭弁論
  6月18日には、自衛隊イラク派兵差止訴訟の第一回口頭弁論が名古屋地方裁判所1号法廷(一番大きい法廷)で開かれました。およそ250人もの原告、傍聴者が全国から来られたため、2時間40分の法廷を前半後半に分けて、入廷者の入れ替えも行いました。
  前半は訴状朗読の他、名古屋弁護団の内河団長の意見陳述、北海道の派兵差止訴訟(箕輪訴訟)佐藤弁護士、東京の違憲訴訟の大山弁護士の意見陳述も行いました。後半はそれぞれの世代を代表する原告四名の意見陳述がなされました。そして、最後に弁護団から国に対して、しっかり裁判に向き合うよう、厳しい指摘をしました。

四 裁判の特徴とこれから
  この裁判では、自衛隊の派兵差止めと違憲確認を主眼としています。訴状ではイラク戦争の実態や自衛隊派兵の事実面等の分析に割き、自衛隊の派兵がイラク市民にとってどんな意味を持つのか、丁寧に分析した上で、解りやすく「ですます調」で書きました。HPからも落とすことが出来るようにしています(派兵差止訴訟で検索して下さい)。
  訴状の中では「戦闘地域への武器使用の可能性を認めた派遣で、憲法が禁じた武力の行使にあたる」と指摘。また、政府が主張する「人道復興支援」を担うには、隊員数などの面からも不適切で、装備や編成をみても実態は占領軍の一員であり、原告らは「戦争や武力行使をしない日本に生存する権利」を侵害された、としています。そして、最後に憲法前文のことを書いた高校生の詩で訴状を締めくくっています。三月末に出版された「読む。書く。護る。」(大塚英志・角川書店)という本にこの訴状のほぼ全文を載せていただいています。
  当然のことではありますが、この裁判は、パフォーマンスではありません。広範な市民の声を結集して現実の撤兵を目指すとともに、法廷の場で違憲判決を勝ち取るために、弁護団を挙げて、また全国の弁護士と連携して奮闘していきます。

 

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