『半田市のPCB処理施設の取消訴訟について』
                        弁護士 佐久間信司
   
 
 PCBというのは正式名をポリ塩化ビフェニエルといい、コンデンサー(蓄電器)やトランス(変圧器)で絶縁材として使われている重宝な化学物質。しかしPCBを自然環境や人の健康を害しないよう完全に分解処理するのは大変難しい。それで国は法律で平成28年までにPCB処理を推進すべしと決めた。
  これをビジネスチャンスとみたのが日本車輌製造梶BもともとJRや地下鉄の車両を作っている会社だが、半田市内の衣浦港に面した場所に大規模な施設建設構想を打ち出した。他社のPCB廃棄物の処理を大量受注して儲けようという考え。しかしこれでは安全性を疑問視する住民の反対運動が起きて当然。しかるに日本車輌は早期に操業しようと昨年8月に知事の設置許可を得てしまった。それで半田市民の有志が設置許可の取消や無効確認を求めて名古屋地裁に提訴して争うことになった次第。原告は半田のPCB処理を考える市民会議のメンバーら34名で、代理人はうちの事務所の私と犬飼弁護士、名古屋南部法律事務所の濱嶌弁護士の3名。
  設置計画の問題点の一つは、日本車輌がPCBの分解方法に採用する気相水素還元法は、日本国内で現実に採用された例がなく安全かどうか保証がないという点。それと日本車輌が予定している分解施設にはダイオキシンを発生させる懸念があるのにその測定体制がないこと、洗浄施設で溶剤として使用される薬品が国の基準を満たしていないこと、フッ素化合物を排出する可能性があることなど日本車輌の事業計画は安全面の技術基準を満たしていない疑いが濃厚。
  他方、廃棄物の適正な処理の推進に関する県条例に基づく住民説明が、洗浄施設について全く行われていないという手続的な問題点もあった。
  PCB処理施設ができてしまってから安全対策を講じるのでは住民の健康や環境保全は危殆に瀕します。訴訟では施設の安全性に対する疑問を科学的に論証し、同時に事業者が住民に対する説明責任を果たしていない点を追及して、PCB処理施設の設置許可処分の取消をぜひとも実現したいと思います。

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