■ 無実の人には一日も早く「無罪」の判決を  弁護士  稲垣 仁史
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 〜再審開始決定に対する検察官の不当な異議申立に憤る〜

 本年四月五日、死刑判決が確定していた名張毒ぶどう酒事件について、ようやく再審開始決定が出されました。ここでいう「決定」とは、「判決」や「命令」と並ぶ裁判所の判断形式の名前であり、日常用語としての「決まった」という意味の言葉とはちょっと違うので注意が必要です。この先、裁判所の「再審を開始する」との判断が確定してようやく「再審」の手続きが始まり、その再審の手続きで裁判所が無罪の判決を出してそれが確定して初めて、奥西さんに対するえん罪が手続的に払拭されるのです。間違った有罪判決でも一旦確定してしまうとそれを覆すのは、本当に大変なことであり、先日の再審開始決定の内容が事実上奥西さんの無罪を認めているに等しいものでありながら、手続として奥西さんの無罪を最終的に確定させるには、まだまだ越えなければならない関門が続いているのです。無実でありながら、事件発生から四〇年以上、死刑判決から三〇年以上も殺人犯の濡れ衣を着せられ死刑の恐怖に耐え続けてきた奥西さんが、晴れて一般社会に戻るには、ただでさえ再審の手続きを越えなければならないのですが、再審開始決定に対する検察官の異議申立は、そのような奥西さんの無罪判決を得る機会を更に先延ばしにするものであって許し難いものと考えます。
  えん罪は、いつ誰の身に降りかかるかわからず、決して他人事ではありません。無実の人には一日も早く「無罪」の判決がなされるように、弁護団として更に努力を続けます。多くの皆さんのご理解とご支援をお願いします。


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