今でも朝夕は渋滞する付近道路



建設現場近くを通学する東小児童

■ 街づくりに住民の声を  弁護士  佐久間 信司
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 私は岐阜県大垣市という地方都市で生まれ育った。弁護士開業後、長男で親の老後の世話をしなければという関係で、大垣に居を構えた。子どもは市内の東校下の小中学校に通っている。
  JR大垣駅より約一q東に帝国繊維椛蜉_工場があり、工場跡地に二〇年ほど前にジャスコ大垣店ができたが、平成一六年四月老朽化のため閉店した。噂ではジャスコは大垣市南方に移転するらしい。ところが同年九月、突然、新聞紙上でジャスコ大垣店跡地に「ロックタウン大垣」という巨大アミューズメント施設建設との報道がなされた。敷地面積は約一〇万gと旧ジャスコの二、三倍に増え、潟Cオンがマックスバリューという二四時間営業の物販店と約六〇軒の専門店を、潟Rロナ(愛知県小牧市)というアミューズメント会社がイオンと組んで、台数九六〇台のパチンコ・スロット店、ゲームセンター、カラオケ、IT喫茶、シネコン、スーパー銭湯、ボーリング場などを作るとの計画だ。設置する駐車場の車両台数は三三六〇台と旧施設の二、三倍の規模。
  しかしこんな巨大な施設が、片側一車線がメインのアクセス道路で、袋小路のような場所にできて市民生活は大丈夫だろうか。建設場所の南には市道を挟んで約五〇mの近距離に市立東小学校・東中学校があるのに、パチンコ・ゲームセンターの風俗店舗がどうしてできるのだろうか。計画だと開業後、多い日は約一万台超の車両が出入りするとのことだが、交通渋滞で近隣住民の足は大混乱してしまうのでないか。
  大店立地法に基づく住民説明会に集まった多数住民が不安や要望を出しても事業者側は全く聞く耳を持たない対応。

 やむに止まれず近隣住民は反対署名の運動に立ち上がった。地元東・三城の連合自治会、大垣市PTA連合会、青少年育成や交通安全などの諸団体などが二万八〇〇〇名を超える住民のアミューズメント建設反対署名を集め年末に大垣市長に陳情した。この住民の声に押されて市長も事業者に対しパチンコ・ゲームセンターの計画撤回や交通渋滞緩和対策を求めたが、事業者側は応じない。
  それで平成一七年五月二〇日に合計二五二八名の住民が岐阜地裁にアミューズメント施設のコロナ館の建築工事禁止の仮処分の申立てを行い、交通渋滞や騒音のない静謐な住環境と、風俗営業のない良好な環境で子どもを育てることを求めて裁判を起こした。経済の活性化のため企業誘致は必要だとか、映画館やショッピングセンターは必要だという住民意見もある。私もそういう思いを理解できないでない。しかし経済の活性化といっても近隣住民の平穏な生活と両立するようその規模や営業内容には自ずから自制が必要だと思う。現在の建設計画は規模が大きすぎる。事業者側は採算を取るにはこの規模の物販とアミューズメントの複合施設が必要だというが、利潤追及の発想だけで企業進出して貰っては困る。
  住民の平穏な生活と両立できる規模・内容の商業施設にすること、学校が近くにあるのだから青少年健全育成のためパチンコ・ゲームセンター・カラオケの出店計画は撤回すること、ショッピングセンターも二四時間営業は自粛、を希望する。
  私はこの裁判を街づくりに住民の声を反映させたいという熱い思いで取り組んでいる。
(平成一七年七月二一日 脱稿)

 

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