■ ロースクール報告  弁護士 前田 義博
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■ 愛知大学法科大学院の教員になって1年余たちました。刑事実務科目と労働法を担当しています。教員になったといっても転職したわけではなく、事務所と研究室を行ったり来たりしています。実務家として実務感覚を大学に持ち込むことが私の役割ですから、これで当然です。事務所に近い愛知大学の教員になって助かりました。
  授業のやり方は従来の大学とはまったく違います。必ず事前か事後に課題を出し、全員に起案させます。先日も、過労死に関する最高裁判例を検討させました。設問の一つは「いかなる事実が業務起因性を肯定する判断において重視されたか」です。判決に摘示されている事実を要約して抽出するだけですが、これが十分にできない。弁護士になったら、出来合いの判決から抽出するのではなく、何が過重であったか自分で探し、主張立証するんだという講評をしました。
  法科大学院でみっちり勉強すれば7〜8割は新司法試験に合格するという当初の制度設計がくずれることが報じられましたが、法科大学院予備校化の危惧は持っていません。皆、自分で考える力をどうしたらつけさせることができるかを考えていますし、学生の社会的関心も低くはないと思います。それよりも、合格率の低下で多様な分野からの挑戦者が減ることが問題でしょう。法律のほの字も知らない学生を3年でものにさせるのは大変ではありますが。


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