■ 【会社分割を活用した事業再生&事業承継を】      弁護士  佐久間 信司
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 景気が回復したとの報道にかかわらず、金回りが良くなったと感じる中小企業家は意外に少ないのではないでしょうか。価格競争で利益は薄く、銀行借入金の返済で苦しんでいる中小企業が多いのが実態ではないでしょうか。

  (会社分割制度が新しくなった!)
  企業の行く末を予測し、不採算のため切り捨てるべき事業と、今後発展させたい事業を区別して事業再生をはかる有力な制度が生まれました。昨年五月から施行された会社法上の「会社分割」制度です。

  もとの会社を分割会社、分離した事業を引き継ぐ会社を吸収分割(または新設分割)承継会社といいますが、分割会社の特定の事業部門の資産・負債を包括的に移転する吸収分割契約(ないし新設分割計画)は分割会社が自由に決めることができます。「事業譲渡」と異なり現金の支払いなしで(継承会社の株式を発行する)、しかも検査役の検査も不要で、スピーディーに行えます。また、会社分割ならば、債権者の同意がなくても免責的な債務移転ができます。しかも新法では旧商法と違い債務超過の会社でもこの会社分割を活用できることになったのです。もちろん債権者保護・労働者との事前協議の手続は踏まなければなりません。

  (中小企業が生き残るために)
  会社分割を活用すれば不採算部門や旧債務を分割会社に残したり、あるいは承継会社に移転したりして、営業利益を叩き出せる事業部門だけを切り離し、中小企業の事業再生を図ることが可能になります。これは企業の世代交替に伴う事業承継にも活用できるスキームです。親が旧会社の負の遺産を引き受け、子どもに良好な事業部門を承継させて企業の存続をはかることも可能になったのです。不採算部門の分割会社(または承継会社)はいずれ廃業し、特別清算等で処理すれば良いのです。実質的には既存会社の不良債務の免除を得たのと同様の効果を期待できます。

  (難問の解決も可能!)
  分割会社(ないし承継会社)が引き継ぐ資産に対する銀行の担保や保証人の問題も、分割対価の設定が適切ならば金融機関と交渉して外すことが可能でしょう。企業規模が大きければ以前から銀行主導で民事再生や旧商法下の会社分割で企業再建が図られてきましたが、銀行の債務免除は大企業だけの特権ではないはずです。銀行の不良債権処理がほぼ完了した現在、中小企業が生き残りをかけて会社分割により第二会社を作り、銀行借入金の実質的な債務免除を追求することも可能になったと言えます。

  法律事務所が、経営・金融・財務・不動産鑑定など他分野の専門家と協働して、中小企業の事業再生&事業承継に尽力することも重要な使命です。詳しくは当事務所の事業再生チームまで。

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