■ 改憲手続法(国民投票法)強行成立      弁護士  福井 悦子
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  5月14日、自民党・公明党は改憲手続法案(国民投票法案)を参議院本会議で強行裁決した。4月9日のNHKの世論調査によれば、通常国会で同法を成立させるべきとする国民の声はわずか8%。大多数の国民が慎重審議を願う中で、それを踏みにじり、国会法で定めた中央公聴会も開かぬまま、審議をうち切って裁決するという暴挙に出たのである。

  成立した同法には、18項目もの「付帯決議」がついた。その内容を見ると、この法律の問題性および審議がいかに不十分であったかが明らかである。

  最低投票率制度の意義・是非について検討を加える ← 現に、国民の79%が最低投票率制度を設けるべきとしている(4月7日朝日新聞)。検討し、最低投票率制度を設置した上で法案を成立させるべきではないか。

・公務員・教員の地位利用による国民投票運動の規制については、意見表明の自由、学問の自由、教育の自由を侵害することのないよう特に慎重な運用を図る ← 主権者国民の意思がもっとも自由に表明されるべき国民投票運動において、同法案が、公務員教員の表現の自由、学問の自由、教育の自由を侵害する危険性を有している事実を自白。

・テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重するとともに本法施行までに必要な検討を加える ← 「カネで改憲を買う」有料公告がまかり通る危惧があることを認めているようなもの。施行までに検討を加えるのではなく、十分検討し、公平性を確保する内容の法案を成立させるべきではないか(その他の付帯決議は割愛)。
ともあれ、改憲手続法は成立した。国会法改正部分は次国会から施行される。すなわち、夏の参議院議員選挙後、両院に「憲法審査会」が設置される。国民投票法部分の施行は3年後で、それまで改正原案審査は凍結されるが、憲法審査会は動き出すため、改憲案の調査検討(=事実上の改憲案づくり)は進められる。要するに改憲の歯車が実際に動き出す。

  改憲策動は第2ラウンドに入った。改憲阻止の闘いも、いよいよ第2ラウンド突入ということである。全国の「9条の会」をはじめとする国民の運動のうねりの中で、「9条を守れ」の声は強くなっているが、今後は国民の声を国会にもっと反映させなければならない。草の根の運動の重要性と同時に、選挙の重要性を改めてかみしめたい。

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