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アメリカの司法制度視察

弁護士 前田義博

 2000年10月22日から1週間、サンフランシスコの裁判所や弁護士会を視察してきました。アメリカは陪審裁判の国です。しろうとに裁判などできるのかという心配はご無用。12人の陪審員が真剣なまなざしで審理を見守っていました。弁護士も検察官もすべて口頭で、しかも陪審員にわかりやすく主張したり、説明したりしているので、傍聴席にいる私にも大変わかりやすい裁判でした。日本ではO・J・シンプソンが陪審裁判で無罪になった事件が批判的に報道されていますが、私が会った検察官は、あれは陪審裁判が悪いのでも、陪審員が悪いのでもなく、担当した検察官が悪かったのだ、この裁判所でやれば有罪にしてみせると説明していました。
 アメリカの裁判官は日本のように司法研修所を卒業して判事補、判事と内部昇進するのではなく、社会経験を積んだ弁護士の中から選ばれます。ある裁判官などは、私たちを歓迎するティーパーティを法廷で開いてくれました。日本ではおよそ考えられないことです。それだけでなく裁判所自体が市民代表も加わったメンバーで運営されています。徹底的に民主主義が実践されていると感じました。
 アメリカには日本の何十倍もの弁護士がいます。日本のように法廷中心の活動ではなく、社会のすみずみにまで入って多方面の業務を行っています。たくさんの中には変な弁護士もいるそうですが、専門分野で活躍する弁護士や、自然保護団体専属の弁護士や法律扶助専門の弁護士もいたりして、層の厚さに圧倒されました。
 もっとも法廷弁護士は重たそうな書類を持って歩いており、こればかりは日本と同じだなと思いました。ただし当然風呂敷ではなくキャスターを使っていました。