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自由法曹団中国訪問団に参加して

事務局  安 田 和 仁

 2000年9月14日から20日まで7日間にわたって行われた自由法曹団主催の中国訪問団に参加させていただきました。 今回の中国訪問は、日本の中国侵略の足跡を訪ねることが大きな目的の一つで、2日目に北京で行われた日中学者・弁護士のシンポジュウムに続き、3日目からは中国東北部(旧満州)を廻るコースと南京・上海を廻るコースに別れての行動になりました。
 私はハルピン〜瀋陽(旧奉天)〜撫順を廻る東北コースに参加し、中日友好協会の職員の方の案内で、細菌戦や生体実験で知られる731部隊跡地(ハルピン)や満州事変が勃発した柳条湖(瀋陽)、村民虐殺事件が起きた平頂山と撫順戦犯管理所(撫順)などを訪れ、各地で被害者の証言を聴いたり、資料館などを見学することができました。
 中国では戦後50年以上を経た現在も抗日戦争の記憶を次の世代に伝えるべく各地に戦争資料館などが建設され、「前事不忘、後事之師」のスローガンのもとに歴史教育(愛国教育とも呼ばれる)がさかんに行われていることが印象的でした。
 今回の訪問を通じて中国民衆が戦争の時代といわれる20世紀最大級の被害者であることを改めて認識させられると同時に、中国・アジア侵略の歴史を「自虐史観」として否定しようとする勢力が国家主義的な教育を復活させようとしている最近の日本の情況を考えると、両国が共通の歴史認識に立って信頼関係を築いていくのは容易なことではないとの思いを抱かざるを得ませんでした。
 約3000人の村民が虐殺されたといわれる平頂山事件の記念館で元団長の上田誠吉先生が「真の日中友好の達成には、なお数世代の歳月を要するであろう」と記帳しておられましたが、21世紀に向けて日本がアジアと真の信頼関係を築いていくためにも、私のような戦後生まれの世代が歴史の教訓を正しく受け止め、次の世代に継承していく努力が必要であると痛感させられました。