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趣味と私
     名古屋刑務所慰問演奏会に参加して    
                       事務局  細 江 寿 喜
1999年11月20日、私が所属している楽団「ジョイフル・ジャズ・オーケストラ」に名古屋刑務所への慰問演奏の依頼があり、同行しました。私は楽器はトロンボーンを担当しています。この楽団は、ジャズのビックバンドで19才から50才までの社会人18名で構成され、楽団のコンセプトは合奏を通して豊かな人間形成と地域社会への学術・文化活動の貢献を掲げ、月2回程合奏練習しています。演奏活動は約3ヶ月に1度の割合で、今回の慰問演奏もその活動の一貫として行われました。
 私は、恥ずかしながら法律事務所に勤めていても刑務所内には入ったことがなく、ましてや受刑者を前に演奏するのも初めてで、演奏中は他のイベントとは心持ち違った緊張感としか表現できない、複雑な体験をしました。
演奏は、刑務所内の飾り付けのない体育館の舞台で行われ、約300名の受刑者を対象に、グレンミラー楽団のポピュラーな曲や、女性ボーカルを入れてオリジナルの当地のテーマソングや叙情歌を8曲ほど演奏しました。舞台はひときわボーカルの衣装が目立ち、受刑者のボーカルのみに強い視線を感じるステージでしたが、曲目によっては中には涙する人もいました。私は、演奏しながら彼らの思いは、家族を愛おしむ気持ちや被害者への思いなど様々な心境だったのではないかと、同時に受刑者の表情を見て、罪を憎んで人を憎まずという事の意味を実感しました。
 そして、間接的ではありますが、自分の趣味でやっていることが僅かでも受刑者の更生の途に役立てたのではないかと感ずることが出来ました。正直なところ、楽団の練習は厳しく、辞めようと思ったことも何度かありましたが、改めて、趣味が地域社会に役立っていることを再認識した演奏会でしたので、微力ながら続けて行く決意を新たにしました。
   (2000年新年号)