「弁護士の1日
」            弁護士 三宅信幸
   
 
  当事務所は、建前でも実態においても、各弁護士の仕事の作法は全く自由である。
 出勤時間もまちまちなら、退出時間もばらばらである。
 お互いの仕事振りにも大した関心はないようである。
 弁護士が16名もいるから誰かが2,3日居なくても気づかないことも多く、4,5日不在が
 続いてようやく気づくということもままある。
 
 しかし、自由気ままに執務してきたつもりであったが、自分の仕事のスタイルを振り返って
 みると、恐ろしく型にはまった単調であることに気づく。
 朝は混雑を避けて地下鉄に乗り、事務所には丁度朝の掃除が終わって落ち着いた時間を
 見計らったように出勤している。
 一般会社員に比べると遅めの出勤であるが、事務所では3番目くらいに早い出勤である。
 一般に弁護士の執務開始は若干遅めである。
 帰りは大体7時から9時の間で事務所を退出している。
 ワンパターンの仕事の繰り返しであるが、強制されたり規則に縛られた結果によるものでは
 ないのでストレスにはならない。
 以前は仕事も中心が裁判所であったので、1日平均3回くらいは裁判所に行っていたが、
 裁判所の審理のテンポの遅さ不満があったりして、民事紛争はできるだけ裁判外での紛争
 処理を心がけている。そのため、以前よりは出廷の回数は減ったようだ。
 
 事務所にいても、電話をかけたり打ち合わせをしたりで多忙ではあり、気づくと夕方という
 ことが多く、なかなか仕事がはかどらないと嘆くことしきりである。
 そして、遅れを取り戻すため、土日に出勤して起案をすることが多い。
 日曜日も大体何人かの弁護士が仕事していることが多い。みんな多忙なうようである。
 電話のない日曜日の仕事ははかどる。
 
 そして、今年も自由気ままにしかし今までと変わらない単調な日常が続いていくのであろう。
 
 

 
    「弁護士の1日」            弁護士 荻原典子
   
 
  朝8時、子供達はお弁当を持って学校へ出かけ、やれやれと洗濯をしていると近所の
 人から電話。
 中学時代の友人に久しぶりに会おうといわれて出かけた娘さんが、100万もするダイヤを
 7時間も勧められてむりやり買わせられたとか……。 
 娘さんは20才になったばかり。若い人はほんとに狙われている、よくよくクレジットの怖さを
 娘さんに話してね、と言って、クーリングオフの葉書の書き方を説明するが、相手の業者さん
 が怖いとのことで、娘さんに一度来てもらい、弁護士名で内容証明を出すことに。
 
 さて今日は10時の裁判から。
 Sさんが離婚後始めたお店で生じたトラブルで裁判を起こしたのだが、離婚成立以来、
 久しぶりにあったSさんは、すっかり元気になって生き生きとしていた。
 
 次は破産事件で裁判所に。
 Kさん夫妻は、奥さんが経営していたスナックが不況の波を受けて破産に。
 勤務先の会社が倒産し長く失業していたご主人も今は就職できて、奥さんのパート収入と
 あわせるとなんとか生活して行けそうだという。
 
 午後からは岡崎で裁判。
 Tさんは、利息が高いことが魅力で、マンゴーの木のオーナーになり800万円を預託したが
 満期になっても返金されない。
 今になって、実はマンゴーの木は形ばかりしかなく、収穫もほとんどなかったことを知った。
 夫に内緒で家中の預金を預託してしまったTさん。
 なんとか少しでも取り戻してあげたいが……。
 
 その後は弁護士会の修習委員会。
 名古屋弁護士会では法曹の卵である修習生に充実した修習を受けてもらい、また弁護士
 の心意気を感じてもらうべくいろいろな研修プログラムを組んでいる。
 それを企画実行しているのが修習委員会である
 
 その後事務所でMさんの相談。Mさんは、1年前破産して免責決定を受けたばかり。
 その後、借りてくれと言うはがきが沢山舞い込むようになって、子供の病気で入院費用が
 かさんだMさんはついまた27000円を借りてしまう。
 すると5万円返済するまで毎週2万2000円の利息を支払わねばならなくなってしまい、
 それを支払うためにまた別のところから借り入れをしてしまったとか。
 今急増している典型的な闇金融だ。
 でも早めに相談してもらったのでよかった。内容証明を出して請求をやめてもらう。
 
 そうこうしているうちに裁判所から、準備書面の提出期限だからとの催促のFAXが
 ……やれやれ、これから書かねばなるまい……。  

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