「歌 に 夢 中」         弁護士 原山恵子
   
 
  現在、私は「ララの会」という歌の会に所属している。
 野間美喜子法律事務所で二期会の渡部千枝先生から声楽の指導を受けている。
 メンバーは伊藤道子、乾てい子、打田千恵子、長谷川桂子、野間美喜子の各弁護士と
 私の6名だ。
 毎月1回、発声練習の後、各人が自分の好きな歌を歌い、先生の指導を仰ぐ。
 個別教授で、自分の番以外は他の人の歌をじっと聴いている。
 練習終了後、当番が夕食を準備し、食事をしながらおしゃべりをするという楽しい会だ。
 
 私は歌は苦手中の苦手。いわゆる音痴だ。
 この私が声楽を習うようになったのは、友人の乾さんから「恵子さん、歌の会があるから、
 ちょっと見学に来ない、食事もあるよ」と言われ、野間事務所に行った。
 食事はおいしいビーフシチューでワインもあり、料理につられて会員になった。
 今から2年ほど前のことだ。
 
 この会は毎年1回、各人が二曲独唱する発表会を開催している。
 2000年11月に第1回、2001年11月、2回目の発表会を行った。
 中華料理をごちそうし、歌を聴いていただくという試みだ。
 
 1回目、私は「七つの子」と「赤い靴」を何とか歌った。
 2回目の昨年は「あざみの歌」と「秋の野」という曲に挑戦。
 夏の「野間山荘」での合宿で選曲し、それから11月4日の発表会に向けて大変な日々が
 続いた。10月の終わりになっても、うまく歌えない。
 家で夫に「私、なかなか歌が完成しないの」と言うと夫は
 「君、何言ってんのさ、完成どころか、よちよち歩きだ、悪いとこだらけだ」と真顔で言う。
 焦った。焦っているのは私ばかりでない。
 野間さんも「恵子さん、私、今年は、なかなかうまくいかないの、完璧をめざすとよくないね。
 あなたの課題は緊張しないことよ」と言う。
 
 渡部先生は私の欠点を根気よく、丁寧に指導して下さる。
 それでも出来の悪い私は、先生の言う通りにいかない。
 私は練習の時、ちらっと、みんなの反応を見る。
 すると先生は「原山さん、今はあなたと私だけの真剣な場なのだからよそ見はいけないよ」
 とおっしゃる。
 でもまた、同じことをする。
 
 発表会当日は、精一杯歌った。
 会終了後、町の木々が、いつの間にか色づいていることに気づいた。
 
 60歳を越えて、夢中になるものに巡り会えた幸せ。
 すばらしい先生と学ぶ仲間に囲まれ、私の歌修行の道は続いている。

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