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日栄事件と「法曹一元」
   
      弁護士 前田義博

 前号(2000年新年号)の事務所ニュースで日栄に対する勝訴判決を報告しました。その報道もあって、その後日栄の被害者の依頼が相次ぎ、23人の被害者の訴訟をつぎからつぎへと提訴しました。それぞれ数人ずつの保証人がありますから、100人近い方の依頼を受けていることになります。大変責任の重いことに身が引き締まります。
 昨年は被害者側勝訴判決が相次ぎ、2000年3月には東京高裁でも勝訴判決が出たので、流れはかわったと思ったのですが、どっこいそうは問屋が卸さず、再び日栄勝訴の地裁判決が出るようになり、福岡高裁でも日栄が勝訴しました。 とても安心できないわけで、ますます身が引き締まります。
 ところで、私の得た勝訴判決を書いた裁判官も、右の東京高裁の裁判長も、弁護士から転じて裁判官になった人です。法律を杓子定規に解釈した判決を書くか、社会的妥当性をよく考えた上で、理論的にも筋の通った判決を書くか、裁判官の経歴も影響しているような気がしてなりません。
 今、日弁連は司法改革運動に取り組んでおり、その目玉の一つが「法曹一元」です。これは官僚的裁判官の弊害をなくすため、弁護士などを経験した社会経験豊かな人の中から、人権感覚にすぐれた人を裁判官に選ぼうというものです。
 日栄事件の経験からも、「法曹一元」が必要だと思います。
                             (2000年夏号)