<戻る>


交通事故訴訟について

    弁護士 田原裕之

 交通事故は最も身近にある災難といえるでしょう。自賠責(強制保険)や任意保険が普及した今日でも、被害者と保険会社との交渉では解決できず、弁護士に解決が依頼されるケースはかなりあります。
 交通事故による損害賠償紛争は、最終的には、民事裁判で解決することになります。
 ところが、現在の交通事故訴訟には次のような問題があります。
@ 不正確な(場合によっては、ずさんな)警察の実況見分調書があるために、事故の発生状況を正確に証明することが困難になることがあります。特に、被害者が死亡した事件では、被害者側から事故態様を証明することが極めて困難になってしまいます。
A 後遺障害の認定について、例えば、いわゆる「むち打ち」の場合、自賠責に後遺障害の認定を求めても非該当と判断され事が多いのです。「頭痛がする」「めまいがひどい」と言っても、それは「患者の訴えだけで、レントゲンなどの所見では異常がないから」というのがその理由です。そして、現在の裁判所は、自賠責の判断を尊重する事が多いので、自賠責の非該当判断を覆すことがかなり難問になっています。
B けがで休んでいた期間の休業損害、後遺障害に基づく逸失利益の算定について、自営業者の場合、所得税申告書を下に損害額を算定するのが通例ですので、実態に合わない場合が出てきます。会社員や公務員の場合、将来の賃上げ分が考慮されていません。
 他にも、適正治療か過剰治療か、慰謝料が低額過ぎないか、等々が交通事故損害賠償の訴訟で争われています。これらの問題は、現在のわが国の損害賠償事件全体に共通するものもあり、すぐに解決する問題ではありませんが、少なくとも、弁護士に依頼した方が、適切な損害賠償を受けられることが多い、ということは確かです。
                               (1999年夏号)