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「最高裁裁判官の国民審査」

 最高裁裁判官の国民審査の機能不全が叫ばれて久しい。先日の総選挙の際もよくわからないまま投票した人は少なくないと思う。審査の判断材料となるような情報(特にわかりやすいもの)がとにかく少ないのである。
 今回の国民審査に先立って、青法協あいちの有志弁護士が、名古屋の弁護士全員に国民審査の模擬投票を呼びかけた。弁護士による模擬投票を行いその結果を公表して、投票の参考にしてもらおうというものだ。弁護士は、その職業柄裁判官の資質に関心を持たざるを得ない。その模擬投票の結果は、国民審査の投票において結構有用な判断材料になるのではないか。しかし、模擬投票では、突然の取組みであったためか50通余りの回答しか集まらず、大々的に公表されるほどの結果にはならなかったようである(それでも回答者の全員から×をつけられた裁判官がいたことは、注目すべきことだ)。
 公表された集計結果をあるメーリングリストで紹介してみた。早速「この結果を他のメーリングリストでも紹介したい」「自分のホームページに載せたい」などの反響があった。やはり判断材料を求める人は多いのだ。
 こういう模擬投票の取組みは全国の弁護士会で一斉に行い、集計結果を全国紙で大々的に発表したらいいんではないか。おそらく模擬投票では多くの裁判官について×が過半数となるであろう。それは裁判官に対する適度なプレッシャーとなり、最高裁において納得のいかない判決が出されることも少しは減るのではないか、と期待するのである。
 うーん、次の衆院総選挙が待ち遠しくなってきた。
               (2000年夏号 弁護士 稲垣仁史)