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 先頃、二つの福祉施設を訪問した。一方は先祖の土地の提供で発足。他方は組織力で誕生。共通するところは、どちらもスタッフの人間性がすこぶる優れていることだ。苑長さん曰く「所員の成長こそが力」。案内戴いた指導員さん。行き交う障害の老人にその名で呼びかける。モノではなくヒトに接する姿勢だ。そして、住込み指導員氏。「地元の人々が『自分もここに協力し、働いて、今一度人生を意義あるものにしたい』と云って協力して下さるのだ」。云うはなから涙をこらえてしばし絶句。いずれも職員の超人的働きで支えられている。エネルギーの源泉が、その優れた人格にあることが身をもって感じられた。
 さてわれわれ。各自の職業を通じて、こうした福祉分野で労苦を重ねる人たちを、いかにして支えることが出来るか?そして法律家は?
 支え得るようになれば、私ども自身が高齢化し障害のもとで暮らす段階に至ったとき、自身も人間の尊厳を維持できるのではないだろうか。
                     (1999年夏号 弁護士 加藤洪太郎)